奥村まことのブログ 吉村順三先生に学んで

 

拡大と縮小

2012年10月8日

広大な宇宙を想う気持ちで建物の設計をすると、個人の敷地を超えた景色がわがものになり、どんなに小さな家でも悠々とした設計が出来る。構造や設備も一部分の問題ではなく、全体がハーモニーを奏でるように作る。ところが、実はその空間の雰囲気を司っているのが、小さな小さな木の寸面である。手で触れるところ、眼の端っこにチラリとみえる、木の寸法である。細い・太い・丸い・カクい、間がどのくらいあいているか、くっ付いているか、光の受け方で変わる色合い。メンとチリ。特にチリは重要。柱を際立たせるか、ひっそりと立っていてもらうか。それぞれの木の種類も楽器の違いのように聞こえてくる。そんな微妙な感覚が私たちの気持ちを支配している。気持ちを拡大したり、縮小したりして、暮らしの中のすがすがしさが決まって行く。吉村先生と多喜子先生は空のかなたで悠々と暮らしておられるに違いない。