奥村まことのブログ 吉村順三先生に学んで

 

維持費

小さな住宅を建てたとき、うちの設計事務所では竣工時に建て主さんにお願いする。「建てるのにかかった費用の1/10を目標に、今日から貯金を始めてください」と。一生懸命よい建物を作ろうと設計も施工も努力するが、なお建物の欠点というものがある。10年の間には、ほぼその欠点が明らかになる。そこで、ある程度の予算を計上してそれを直すと、すばらしく丈夫な建物になる。おそらくその補強工事は、あと30年は何もしないでも大丈夫、というくらいの価値をもつ。3000万で建てた住宅に10年後に300万かけるのは少し多すぎる感じもするが、その価値は大きい。勿論10年経ったときに完璧であれば最高。どうやら公共工事のシステムの欠点はそこらへんにある。

柏崎市が年間の経費を上回る借金を抱えているという。その原因は原発交付金で建てたハコモノの維持費。年間入場料の10倍の経費がかかる博物館が紹介されていた。群馬県上野村の汚水浄化設備と福岡県柳川市の河川整備費の例では、国からの交付金を返上して維持費の少ない地域システムを採用し、自治体の経済を守った。

2012年5月16日